表情解析で広告効果を高める

  • Magnus Linde
  • 5 分

Woman looking at a computer emotion recognition

市場調査の専門家であるMagnus Linde氏は、感情に影響を与える広告コンセプトをテストすることの重要性を解説しています。なぜ、そしてどのようして広告効果を向上させることができるのか、調査例を挙げて紹介します。

記憶に残る広告は感情を呼び起こす

広告の第一原則が「見てもらう」ことだとすれば、第二原則は「感じてもらう」ことでしょう。広告の良し悪しは、その両方が上手くいくかどうかにかかっています。しかし、「見てもらう」ことは直感的に理解しやすいですが、「感じてもらう」ことを明らかにするのは簡単なことではないかもしれません。ビジネスの場面では、私たちは合理的に考え、感情的にならないようにコントロールしていますが、神経解剖学者のJill Bolte Taylor氏は「多くの人が、人間は「感情より理性」の生き物だと思っています。でも本当は「考える」より「感じる」生き物なのです。」と述べています。ここ数十年の脳科学の飛躍的な進歩は、人間のすべての行動の背後に感情があることを示しています。従って、顧客に感情を抱かせることは、顧客の注意を引き、広告を記憶に留め、最終的に製品を購入してもらうための鍵となります。そのため、意識的で合理的な思考に頼った従来の市場調査による広告テストでは、全体像を把握できないことが多いのです。データと現実にギャップがあることを知らずに進めてしまうと、ただコストを費やすばかりの失敗につながるかもしれません。幸いなことに、この問題を丸く収め、ギャップを埋める方法があります。

広告テストにアイトラッキングと表情認識を活用すべき理由

技術の進歩のおかげで、CMやプロダクト・プレイスメント、ソーシャルメディアの動画広告やYouTube広告など、テレビ上の広告に対する人間の反応を暗黙的に測定することが可能になってきました。表情解析とWebカメラによるアイトラッキングは、広告の重要な原則である「見てもらう」「感じてもらう」を測定するのに有効な手法です。これらを組み合わせて使用することで、注意や感情という捉えどころのない力を明確なデータに変えることができるのです。また、これらの手法は素早くデータを収集でき、費用対効果も高くなります。ここでは、 Tobii Dynavoxのビデオ広告について、わずか数百ドルのコストで、48時間以内に判明したことをお見せしましょう。

エビデンスに基づくソーシャルメディア広告テスト

ソーシャルメディアほど注目を集めるための競争が激しい場所はありません。そこで、Tobii Dynavoxの2つのビデオ広告が成功することを確認するために、私たちはWebカメラによるアイトラッキングができる「Sticky」 を使ってテストを行いました。調査参加者には、テスト用のビデオを1つ見てもらい、Webカメラを通して視聴中の彼らの注意と感情を追跡しました。その後、広告がどのように気に入ったかを尋ねました。

ストーリーを聴く - GoogleアシスタントがSnap Core Firstに搭載

ストーリーを聴く - GoogleアシスタントがSnap Core Firstに搭載

音楽の再生とコントロール - GoogleアシスタントがSnap Core Firstに搭載

音楽の再生とコントロール - GoogleアシスタントがSnap Core Firstに搭載

結果を見てみると、アンケートの回答は、広告に対して好意的な反応が圧倒的に多いことを示していました。回答者のほぼ全員(90%)が、全体的な印象は「非常に」または「やや好感が持てる」と答えました。好感度は広告効果においては重要な指標であるため、このことは一つ重要なことを教えてくれました。

しかし、このようなテスト環境においては、人々がビデオを最後まで見たからといって、好感を持っているということにはなりません。人々の注目を集め、注意を引き続けるのに十分魅力的なのだろうか?という点も考慮しなければなりません。そのため私たちは、暗黙的なリサーチ手法でも広告をテストしました。

感情のデータに目を向けると、「悲しみ」が支配的な感情であることがわかりました。これは他の多くのケースで懸念を引き起こすかもしれませんが、これこそが私たちが探していたものなのです。アシスティブ技術の文脈では、「悲しみ」は視聴者の注意を引くのに十分なほど、視聴者に思いやりと感動を与えることができていることを示しています。

Emotional recognition - sadness using Sticky by Tobii Pro

また、データをより深く掘り下げてみると、動画において、アシスティブ技術を使うことで得られる幸福感について言及した瞬間に、「喜び」の感情がピークになることがわかりました。また、アイトラッキングでは、「喜び」のピークと同じ瞬間に、ほぼすべての参加者が商品名を見ており、視聴者にポジティブなブランドとのつながりを残していることがわかりました。

Emotional recognition - joy using Sticky by Tobii Pro

全体的なデータから、私たちは市場で成功する可能性の高い、勝利のコンセプトを手に入れたと言えます。また、今後どのように編集すれば、さらに高いエンゲージメントを得られるのかのヒントも得ることができました。私たちはこれまでのテストと経験から、ちょっとした編集が大きな違いを生むことを知っています。例えば、あるビールブランドのCMでは、30秒のスポットを20秒に切り詰めるだけで、より早く、より強い喜びの反応が得られ、全体として40%高い感情的エンゲージメントが得られました(Sticky by Tobii research 2017)。

表情解析とアイトラッキングが観点を広げる

調査結果をまとめると、盲人たちが象の体の一部分を触って象を表現するという古いたとえ話を思い出します。

同様に、研究においても、唯一のデータソースからの結果に焦点を当てることは、全体像を見逃してしまう危険性があるのです。たとえばアンケート回答だけに頼っていたのでは、十分な関心を寄せてもらえるかどうかがわからないままでした。表情解析を加えることで、その重要な検証を明確な形で得ることができたのです。

結論として、Webカメラによるアイトラッキングと表情解析による広告テストは、クリエイティブチームからメディアバイヤーに至るまで、すべての関係者が、広告のパフォーマンスについて、より幅広く、より豊かで、より正確な見解を得ることを可能にします。

執筆

  • Magnus Linde - Tobii Pro Event Speaker

    Magnus Linde

    Marketing Research Specialist and co-founder Implicit Academy

    Magnus Linde is an experienced Market Researcher and Analyst with 20+ years’ experience. Magnus has also co-founded the implicit academy, a network dedicated to spread awareness and knowledge in behavioral economy, neuromarketing and implicit market research, with special focus on eye tracking, facial coding, EEG and IAT.

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