違いは欠点ではない:アイトラッキングが自閉症の人の能力を明らかにする

  • Katherine B. Martin
  • 8 分

Tobii Autism blog post

違いは欠点ではない:アイトラッキングが自閉症の人の能力を明らかにする。 

4月は自閉症啓発月間です。Tobii Proは、自閉症コミュニティでの最新の研究を喜んでお伝えします。この分野をリードする数人の研究者に、彼らが行っているアイトラッキングを使用した将来性のある革新的な研究について、インタビューを行いました。このブログ記事で、アイトラッキング技術が彼らの研究にどう役立ってきたのかを明らかにします。これまでの研究は、自閉スペクトラム症(ASD)の発達と欠点を考察することに焦点を当ててきましたが、最近ではASDの人が持つ特異的能力の考察が行われるようになりました。 

アイトラッキングは、視覚行動を測定し、個人が何をどれくらい見ているかを明確に示すツールであることから、ASDの発達を調査するための方法として長い間使用されてきました。ヴァンダービルト大学で機械エンジニアリングの研究をしているJoshua Wadeは、アイトラッキング研究の利点について聞かれた時に、こう述べました。「アイトラッキングは個人の注意(視線)を即時に解釈可能な形で測定できます。それは他のバイオマーカーではできないことです。人がどこに注意を向けているか(どこに目線を置いているか)をリアルタイムで知ることができるので、心理過程(メンタルプロセッシング)に関する全てを把握することができます。」現在、アイトラッキングは、個人の凝視の正確な追跡を容易にすることから、ASD研究において高い評価を受けているツールです。この情報は、認知機能や神経機能の代理としての人間の挙動や交流に関する客観的な見識をもたらします。 

ASD研究における研究ツールとしてのアイトラッキングの発展 

2002年に、自閉症の人に関する最初のアイトラッキングの研究結果が発表されました。これにより、自閉症の人は(相手の)鼻と目を見る時間が、自閉症ではない人よりも短いことがわかりました(i)。

Visual scanning of faces in autism. Journal of autism and developmental disorders

グーグルスカラーのクイック検索で調べたところ、それ以来、アイトラッキングと自閉症に関する約18,000の記事が発表されました。これらの記事がカバーしている範囲は、ASDの認知挙動と初期のバイオマーカーから、社会的交流を行う機能の欠如にわたっています。テキサス工科大学で人間発達と家族の研究(Human Development and Family Studies)を行っている教授のAnn Mastergeorge博士は、社会的刺激を受ける子供が介入プログラムの前と後に示す挙動パターンを文書化するための「視覚システムにつながる窓」として、アイトラッキングを使用してきました。Mastergeorge博士は、「子供達がどこを見ているかを実際に視覚的に示す科学的なしっかりしたデータ」を集めるためにアイトラッキングを使用していると語ります。さらに、「私達が介入を行い、介入前と介入後の違いを実際に示すことができる方法であるということは、非常に深い発見です」と加えました。

アイトラッキングの研究がASDの人々の能力を明らかにする。 

近年、自閉症コミュニティは脳の多様性の重要性を強調するようになり、他人の差異を受け入れるのと同じように、ASDによる(通常の人との)違いを許容するよう促しています。Wade氏は、次のように語りました。「脳の発達障害やその他の障害は、多様性の要素の一つに過ぎないと考えることができます。なぜなら、自閉症の人は高い視覚的IQや空間的IQなどの特定のスキルを持っているからです。これらのスキルを活かせる業界があるかもしれません。」 

嬉しいことに、研究はASDの人の欠点だけではなく能力の調査も行う方向へ転換してきており、これは歓迎すべきことです。マサチューセッツ大学ボストン校の心理学准教授である 

Zsuzsa Kaldy博士は、アイトラッキングを使ってASDの幼児達の周りに注意を向けるスキルを文書化した最初の研究者の一人です。Kaldy博士は、ASDの子供達の制限された範囲の関心がどのように発達するかを明らかにした彼女の研究において、以下の驚くべき調査結果を報告しました。ASDの幼児達は、「ウォーリーをさがせ!」のような探索課題では、定型発達の幼児達よりも早くターゲットを見つけるのです(ii)。「彼らは本当にこの課題が好きで、非常に上手です。同じ年齢の定型発達の子供達よりも得意なのです」と彼女は言いました。 

二回目のアイトラッキングによる調査で、彼女のチームは、ASDの2歳児達が定型発達の幼児達よりも長い間ビデオを鑑賞し、より多くのエネルギーと興奮を持って(瞳孔の径の変化によって示された)、ビデオを見ることを発見しました(iii)。将来、この調査結果は自閉症の子供をどのように教育するのがベストであるかを発表する助けとなるかもしれません。Kaldy博士はこう加えます。「明らかになったと思われることは、この過度に集中する注意力が非常に幼い年齢で現れることです。そして、それを有意義に活用することができるのです。学ばせたいと思うことに彼らの注意を向ける方法が分かれば、彼らが集中して学習できるようになる可能性があるので、そういった意味で、この研究結果は親や家族に希望を与えます」 

Autism research ieye tracking robots

その他の共同研究では、ASDの子供達が持つ独特のスキル全般を、能力をベースにした介入に組み込むという取り組みが始まっています。Mastergeorge博士は、この研究に参加しており、ロボットへの注目とアイトラッキングを調査するという形の初めての研究を発表する準備をしています。彼女の説明によると、ASDの子供達はロボットと会う機会を持ち、ロボットが特定の種類のアクションを行い、子供たちに特定の言葉や動きの真似を実演するように頼みます。Mastergeorge博士は、ASDの子供達が、一般的な人よりもロボットの言葉や動きの真似をする課題の方が「実際に上手にできる」と興奮しながら報告しています。なぜなら、ASDの子供達は、人に指示されて、これらと同じ課題を行う時と比べて、ロボットに指示される方が不安を感じないからです。 

 A Pilot Study Assessing Performance and Visual Attention of Teenagers with ASD in a Novel Adaptive Driving Simulator

ASD研究において新しく生まれた能力ベースの考え方(観点)は、ASDの幼児や子供達だけではなく、ASDの青年や大人にも広がっています。Wade氏は、ASDの青年がソーシャルイベントや運転中の刺激に対して非定型の凝視パターンを示す一方で、ルールに従った運転課題を与えられた時には、ASDではない人々よりも上手に課題をこなすことができたと報告しています(iv)。「自閉症の人が物事を文字通り解釈し、ルールに忠実に従う傾向があることを考えれば、これは非常に納得のいく結果です」と彼は述べました。この知識により、ASDの青年が運転の課題を行う間に視覚的注意とパフォーマンスを強化するよう設計された、彼らの凝視パターンを考慮した介入を行うための基礎が形作られました(v)。 

最新のASD研究は、違いは欠点ではないという考え方をサポートする流れが続いており、Tobii Proチームは、自分達のアイトラッキング・ソリューションがこの革新的な研究の中で使用されることを非常に嬉しく思っています。我々はアイトラッキング技術が研究にもたらす影響を認識しており、この先、他の研究者達が同じビジョンを共有していることを耳にするだろうとワクワクしています。全ての研究者達が、もし将来の研究におけるアイトラッキングの可能性について尋ねられたら、アイトラッキングを自宅や屋外での活動に取り入れることの重要性を支持するでしょう。我々Tobii Proがこの分野をリードする研究者達と引き続き協力して研究をしていくことを楽しみにしており、新たな研究者がTobii Proファミリーに加わることを歓迎します。 

この技術が他の研究者達の研究をどのように向上させているかについて詳しく知りたい場合は、事例紹介ページにてUppsala大学大阪大学で行われた他の研究に関して確認することができます。 

  • スクリーンベースアイトラッカー
  • 学術研究
  • 発達心理学

執筆

  • Tobii Pro employee Katherine Martin - Sr. Research Scientist

    Katherine B. Martin, PhD,

    Senior Research Scientist, Tobii

    Katherine's research background is in developmental psychology, where she harnessed methodological advancements in objective measurement to better understand the early development of infants and children with autism spectrum disorder. Her most recent publication, "Objective measurement of head movement differences in children with and without autism spectrum disorder," can be found in Molecular Autism.

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