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eスポーツプロ選手の視線の動きと強さの関係を分析

事例

eスポーツプロ選手の視線の動きと強さの関係を分析

株式会社セガ 様

「凝視」が重要と言われる『ぷよぷよeスポーツ』。

株式会社セガ様では、アイトラッキングを活用して検証。

SEGA and SEGA logo are registered trademarks of SEGA CORPORATION.
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背景

視線移動の激しい『ぷよぷよeスポーツ』で、プロの視線を計測。

株式会社セガ様の「ぷよぷよ」は、1991年に登場した落ち物アクションパズルゲームです。

そのシンプルで分かりやすいゲーム性や可愛らしいキャラクターが相まって発売当初から人気を集めていました。

1992年には、落ち物アクションパズルゲームとしては初めて対戦形式を導入。ゲーム性がさらに高まり、爆発的なヒットを記録しました。それ以降、アクションパズルゲームの定番ゲームとして、さまざまなゲーム機や携帯電話、スマートフォンなどで展開され、幅広い層に愛される国民的ゲームとなっています。

2018年3月にはJeSU(日本eスポーツ連合)公認タイトルとして指定され、プロ選手も誕生して、eスポーツシーンにおいても人気が上昇しています。

「ぷよぷよ」では、まず、画面の上方から次々と「ぷよ」が降りてきます。この中で、同じ色の「ぷよ」を4つ以上つなげることで、「ぷよ」を消すことができます。プレイヤーは、「ぷよ」を左右に移動させて、上下の位置を入れ替えたり、左回転や右回転で縦横方向を変えたりするなどして、同じ色の「ぷよ」がつながるように積み上げながら、「連鎖」を作り出していきます。

「ぷよ」を消すことに失敗して「ぷよ」が画面の上部まで積みあがってしまうとゲームオーバーとなってしまいます。

対戦型の『ぷよぷよeスポーツ』では、自分の画面で「連鎖」を作ると相手の画面に「おじゃまぷよ」を送り込むことができ、相手の「連鎖」を邪魔することができます。相手の「連鎖」の状況をみながら、相手がいやなタイミングで「おじゃまぷよ」を送り込むことも重要な作戦の一つです。

このため、特に、プロ同士の対戦においては、自陣で「連鎖」を組んでいくことも大切ですが、対戦相手の動きやフィールドの状況を把握する「凝視」と呼ばれるテクニックが重要だと言われています。このため、対戦中は、プレイヤーの視線が激しく移動しています。

そこで、株式会社セガ様では、トビー・テクノロジーと共同で、対戦中のプレイヤーの視線計測とインタビューを行い、プロ選手の「情報収集の技」を解明する研究実験を行うことになりました。

結果

研究実験の結果…プロ選手の視線移動にも個性がでている。

アイトラッキングによる研究実験の結果、プロとアマチュアでは、視線移動量に大きな違いがあり、プロは対戦相手のフィールドから、より多くの情報を得ている可能性が高いことがわかりました。

また、プロ選手同士を比べても、プレイ中の視線の動きには個性があることが分かりました。

例えば、delta選手は、「NEXTぷよ」「NEXT2ぷよ」「相手フィールド」を見る時間割合・頻度が高く見られました。

一方、飛車ちゅう選手は、プレイヤーフィールドと対戦相手フィールドを見ている時間割合・頻度が多く、 delta選手と異なり、「NEXTぷよ」「NEXT2ぷよ」への視線移動はほとんど見られませんでした。しかし、その後のインタビューでは「確認している」との回答でした。これは、視線の中心線の外側で「NEXTぷよ」「NEXT2ぷよ」を把握している可能性があります。

また、2人のプロ選手は、ともに対戦相手のフィールドを見る時間が長いのですが、そこから得ている情報が異なることも分かりました。

ご担当者である株式会社セガ ジャパンアジアパブリッシング事業部 eスポーツ推進室 アライアンスチーム チームマネージャーの村山 浩司様は、次のように述べています。

「『ぷよぷよeスポーツ』では「凝視」がポイントだといわれていましたが、アイトラッキングで、プロ選手の「情報収集の技」が可視化され、「凝視」の重要性と、プロ選手の「凝視」にも個性があることが明らかになりました。これからも、アイトラッキングなどのデータを活用してプロ選手の「情報収集の技」を解明し、選手スタッツへの応用、メンタルとの関連の研究などへの応用の可能性について検討していきます。」

[分析詳細]

調査目的:「ぷよぷよ」プレイヤーの試合中の視線を取得することで、どのような数値が熟練者特有の情報収集を示すことに繋がるか明らかにする。

調査概要: 調査対象者(プロ選手2名、アマチュア1名)に同じタスクを与え、その間の視線データを取得する。 その後、視線動画を見ながらインタビューを実施する。

分析概要:

1.視線データとインタビューをもとに技能分析表を作成。

2.技能分析表から、有益な視線情報項目を洗い出す。

3.洗い出した視線情報について実際に集計し選手相手の相違点を検証する。

4.数値化できない要素について検証する。

分析結果サマリ:

有益な視線情報項目は以下の通り

1.本線(大きな「連鎖」)積み中の視線配分(見た時間割合)

2.本線積み中の凝視で得る情報量(対戦相手フィールドを見ている間の視線移動量)

3.本線積み中にそれぞれの情報を得る頻度 (見てから次に見るまでの時間間隔)

4.最初の「連鎖」中の視線配分(見た時間割合)  
5.最初の「連鎖」中のプレイヤーフィールドから得る情報量 (プレイヤーフィールドを見ている間の視線移動量)

1. 本線(大きな「連鎖」)積み中の視線配分(見た時間割合)

プレイヤー 101 (アマチュア)と比べ、プレイヤー 102 (プロ :delta 選手 )は NEXT ぷよ (次に落ちてくる組ぷよ) 、 NEXT2 ぷよ (次の次に落ちてくる組ぷよ 、通称:ネクネク )、 対戦相手フィールドを見る時間割合が大きい。

戦略として NEXT ぷよ 、NEXT2 ぷよ の情報を重視し、対戦相手フィールドの情報を得る時間を確保。

プレイヤー 103 (プロ :飛車ちゅう 選手 )は プレイヤーフィールド 、対戦相手フィールドを見る時間が長い。※別注

2.本線積み中の凝視で得る情報量(対戦相手フィールドを見ている間の視線移動量)

プレイヤー 101 (アマチュア)と比べると、 プロである 102 、 103 とも視線移動量が多い。

3.本線積み中にそれぞれの情報を得る頻度 (見てから次に見るまでの時間間隔)

101 (アマチュア) と比べると、 プロである 102 、 103 どちらも対戦相手フィールド を見る間隔が短い。

4.最初の「連鎖」中の視線配分(見た時間割合) 5.最初の「連鎖」中のプレイヤーフィールドから得る情報量 (プレイヤーフィールドを見ている間の視線移動量)

101 (アマチュア)と比べると、 102 (プロ) は(見た時間割合は小さいにも関わらず) プレイヤーフィールドを見ている間の視線移動量が多い。
短い時間でより多くの情報を得ている。

5.最初の「連鎖」中のプレイヤーフィールドから得る情報量 (プレイヤーフィールドを見ている間の視線移動量)

101 (アマチュア )と比べると、 102 (プロ )は(見た時間割合は小さいにも関わらず) プレイヤーフィールド を見ている間の視線移動量が多い。
→短い時間でより多くの情報を得ている。

(別注)プレイヤー103(プロ)の視線移動について

102(プロ)、103(プロ)の最初の積みにおけるgaze plot(視線の軌跡を可視化したもの)を比較すると、103の視線はNEXTぷよ、NEXT2ぷよには殆ど向いていないが、
プレイヤーフィールドの上部に多く分布していることがわかる。

103自身へのインタビューではNEXTぷよ、NEXT2ぷよを確認する旨の発言をしていたため、下図赤枠の辺りに視線が向かっている際に中心視の少し外側でNEXTぷよ、NEXT2ぷよの色を把握していると思われる。

103がぷよを積んでいる最中にプレイヤーフィールドを見ている時間が長いのは、少し遠くからNEXTぷよ、NEXT2ぷよを確認していることが要因と推察される。

         102:delta選手                      103:飛車ちゅう選手 
         102:delta選手                      103:飛車ちゅう選手 
  • 執筆者

    Tobii

  • 読了時間

    6分

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