home
検索
Experimental variables

学術研究に関する記事

アイトラッキング研究における 「仮説」と「変数」

学術研究は、世界を変える力の一つです。イノベーションを促進し、複雑な問題に対する解決策を提供することで、技術、医療、公共政策など様々な領域で「生活の質」を向上させます。世の中の謎を解明したい、あるいは理論的な、逸話的な仮説を検証してみたいという好奇心や願望から、学術分野主導の改善は始まります。

アイトラッキングは、視覚的注意、記憶、意思決定など、人間の行動や認知の様々な研究課題に対して使用されることの多い、行動研究のためのツールです。

ここでは、アイトラッキングを活用した研究課題の例をいくつかご紹介します:

  • ホラー映画を見ることが自律神経系にどのような影響を与えるのか?

  • 眼球運動は記憶想起に影響するか?

  • 瞬きは時間の知覚に影響するか?

研究の仮説、独立変数、従属変数

研究課題の答えを管理された環境で計画的に答えを出すことは、膨大で漠然とし過ぎています。そのため検証可能な仮説に分解する必要があります。仮説とは、独立変数が実験によって操作され、それに対応する従属変数の変化が観察された場合に起こりうる結果に ついての予測であると言えます。研究者は既存の知識に基づいて仮説を立て、その仮説を実証もしくは否定するために、実験を計画します。

独立変数:

実験者が実験で操作する因子または条件。仮説はこの変数を変えると従属変数に直接的な影響があることを示唆する。

従属変数:

独立変数の操作に反応して観察または測定される因子もしくは条件。

Experimental variables
独立変数と従属変数の関係

実験の仮説とその独立変数、従属変数の例を示します:

·  仮説: ホラー映画の視聴は通常の映画と比べて瞳孔の大きさが増大する。

独立変数:

映画の種類(ホラーか、そうでないか)

従属変数:

瞳孔の大きさ

· 仮説:記憶の符号化(memory encoding:一時記憶から長期記憶へ転送する処理)中のサッカードは、記憶のパフォーマンス向上につながる

独立変数:

符号化中のサッカード

従属変数:

記憶のパフォーマンス

· 仮説:聴覚刺激中のまばたき回数が多いほど、刺激の時間は長く感じられる。

独立変数:

聴覚刺激中の瞬目率

従属変数:

聴覚刺激の時間認識

外部変数

アイトラッキングの実験設計に、考慮すべき追加の変数があります:

外部変数(交絡変数)

主要な独立変数や従属変数ではないにもかかわらず、実験の結果に影響を与える可能性のある要因や条件。外部変数は、データに不要なバイアスをもたらし、結論を不正確に導く可能性があります。外部変数には、コントロール出来るものとコントロール出来ないものがあります。

  • コントロール出来る変数は、実験中一定に保つか、管理されます。管理の方法として、無作為化(ランダム化)、マッチング(類似した条件をグループ化)、    コントロールできる外部変数で相殺などがあります。

  • コントロール出来ない変数は、研究結果に影響する可能性がありますが、     研究デザインにおいて意図的に管理したり、説明したりしないファクターです。  コントロール出来ない外部変数は、観察された効果が、独立変数によるものか、  その他の要因によるものかの判断を難しくします。

例えば「サッカードと記憶能力の関連性」の実験では、考慮すべき外部変数がいくつか あります:

コントロール出来る外部変数:

  • 室内環境:温度、湿度、騒音レベル、照度

  • 被験者特性:年齢、性別、学歴

  • 刺激提示の順序:サッカードの多い場面と少ない場面のカウンターバランスで相殺

  • 時間帯:体内リズムを考慮

コントロール出来ない外部変数

  • 実験時の感情や気分の状態が記憶に影響する可能性

  • 視覚疲労 – サッカードの回数や想起の質に影響するかもしれない

  • 注意散漫 – 実験室の外からの予期せぬ騒音

  • 記憶能力の個人差

Experimental variables
独立変数と従属変数に影響を及ぼす外部変数

被験者変数と刺激変数

被験者変数

実験における被験者の反応に影響を与える可能性がある様々な個人の特性。被験者変数の例としては、性別、年齢、民族性、社会経済的地位、識字状況、気分、臨床診断などが あります。

刺激変数

行動が起きる状況の一部である刺激、あるいは刺激群。これらは多くの場合、独立変数 および共変量を表したもの、またはその一部です。例としては、項目数、カテゴリー、 刺激の混み具合、色、明るさ、コントラストなどがあります。

変数の運用 - 実験の準備に不可欠なステップ

実験を始める前に、各変数をどのように測定し記録するかについて、明確な定義と戦略を持つことが重要です。このプロセスは変数の操作化(variable operationalization)と 呼ばれています。「サッカードと記憶パフォーマンスの関連性」を調査する実験では、 2つの主要な変数を操作化する必要があります:

サッカード(独立変数)

サッカードの数とは、個人が視覚的情景を見るときに起こる、急速な眼球運動の回数の ことです。例えば、あるAOIに向かうサッカードの振幅、サッカードの数、スキャンパスなどが含まれています。

サッカードを操作するには、「被験者に視覚刺激が呈示されている全ての期間で、画面から目を離さないように指示をする」刺激変数を取り入れます。これにより、“サッカード”と“停留”を比較することが出来、サッカードが記憶の想起に与える影響を説明できるようになります。
眼球運動の種類については、こちらをご覧だくさい。

アイトラッキングのソフトウェアやハードウェアをお使い頂くと、サッカードや停留の様々な要素を計測、記録、定量化することが可能です。また、Tobiiアイトラッカーは最大1200Hzの眼球運動データを取得し、「Tobii Pro ラボ」では様々なアイトラッキングメトリクスの演算とエクスポートを簡単に行うことが出来ます。

【ホワイトペーパー】アイトラッキングを使った認知過程研究入門

実験、どのように認知プロセスの実験を行えばよいのかについての参考に、     こちらも是非ご覧ください。

記憶のパフォーマンス(従属変数)

記憶力についてどのような要素を定量化するか、またどのような課題を用いるか、例えば再生課題を用いるのか、それとも認識課題か、あるいは想起課題が良いかなどを明確にしておきます。

記憶のパフォーマンスの測定に関連する変数には例えば以下のようなものがあります:

  • 課題のタイプ(例:純粋想起、助成想起、認識)

  • 刺激の素材(例、単語、イメージ、その他のタイプの情報)

  • 提示形式(例、視覚、聴覚、またはその両方)

  • 記憶の要素(例:速度、正確度、またはその両方)

  • 執筆者

    Ieva Miseviciute

  • 読了時間

    4分

Author

  • Tobii employee

    Ieva Miseviciute, Ph.D.

    SCIENCE WRITER, TOBII

    As a science writer, I get to read peer-reviewed publications and write about the use of eye tracking in scientific research. I love discovering the new ways in which eye tracking advances our understanding of human cognition.

Related content