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研究/調査/レポート

あなたはゾーンに入っていますか?

瞳孔の大きさが「フロー状態」を理解するのに役立つ方法

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  • 執筆者

    Ieva Miseviciute

  • 読了時間

    2 min

あなたは、なにかに没頭するあまり、時間や周囲の状況がわからなくなったことがありますか?一般的に「ゾーンに入る」と呼ばれる、フロー状態という精神状態です。集中力が高く、タスクに完全に没頭し、純粋に楽しんでいることが特徴として挙げられます。

ロッテルダムにあるエラスムス大学の Van den Linden博士と Bakker博士の研究グループは、フロー状態の神経認知の基盤を明らかにしました。

フロー状態に潜在的に関与している脳構造のひとつに、小脳座 - ノルエピネフリン系(Locus Coeruleus- Norepinephrine system: LC-NE)があります。LCは脳幹にある小さな核で、神経調節物質であるノルエピネフリン(ノルアドレナリンとも呼ばれる)をほとんどの脳部位に供給する主要な構造となっています。また、LC-NEの活動は、覚醒と集中のレベルを直接的に調節します。最適なタスクへの取り組み方は、覚醒度の逆U字型になります。(ヤーキーズ・ドットソンの法則参照)

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パフォーマンスと覚醒度の間のヤーキーズ・ドットソンの法則 Aston-Jones and Cohen (2005)より引用

LC-NEシステムは、警戒心に関連した瞳孔の拡張を制御しており、瞳孔の大きさの変化を計測することは、LC-NE活動を調べるための確立された方法です。LC-NE活動を間接的に調べるもう一つの方法は、P300の脳波測定です。 P300は、LC-NEに関連する皮質活動を表す、注意やタスクによって変化する事象関連電位です。本研究は、被験者が主観的フロー状態にあるときの瞳孔径の変化と脳波測定を組み合わせて行いました。

本研究の結果、フロー状態とLC-NE活動の2つの指標(瞳孔の大きさとP300振幅)は、主観的課題の難易度の上昇に伴い、同じ逆U字型の関係を示すことがわかりました。 また、心理的フローと瞳孔の拡張の間には正の直線関係があり、フロー感が高いと報告された課題では瞳孔がより拡張することが示されました。

この研究によって、瞳孔拡張が心理的フロー状態を捉えるための非侵入的な方法であることと、フロー状態にLC-NEが関与していることが明らかになりました。

参考文献

Lu, H., van der Linden, D. & Bakker, A.B. Changes in pupil dilation and P300 amplitude indicate the possible involvement of the locus coeruleus-norepinephrine (LC-NE) system in psychological flow. Sci Rep 13, 1908 (2023).

引用文献

Aston-Jones, G. & Cohen, J. D. An integrative theory of locus coeruleus-norepinephrine function: Adaptive gain and optimal performance. Annu. Rev. Neurosci. 28, 403–450 (2005).

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  • 執筆者

    Ieva Miseviciute

  • 読了時間

    2 min

    カテゴリータイプ

    • 研究/調査/レポート

    対象製品

    • アイトラッキング製品

    対象別ソリューション

    • 学術研究

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