home
検索
Museum setting

事例

言葉を通して見る: アイトラッキングで美術館をナビゲートする

Zsofia PilzはTobiiのアカウントマネージャーで、ライデン大学の大学院で博士課程に在籍しています。彼女はフランチェスコウォーカーのHATLabで研究を行っており、ヒューマンインタラクションとテクノロジーを専門としています。この研究では、アムステルダムの世界的に有名な美術館、アムステルダム国立美術館(Rijksmuseum)と提携して、絵画の解説文が来館者の注目をどのように誘導するかを調査しました。調査には、Tobii Pro グラス3が使用されました。

美術館には、年間数百万人が訪れていまが、来館者は、様々なバックグラウンドを持っています。それぞれの人が美術に関して、様々なレベルの知識を持っています。すでに作品の文脈や様式に関する知識を持っている来館者もいれば、作品を完全に理解するために追加の情報を必要としている来館者もいます。いずれにしても、情報提供が不可欠なのです。

こうした情報は、多くの場合、美術館の「解説文」として提供されています。「解説文」は通常、絵画の重要な要素を簡潔に要約した形で、鑑賞者に提示されています。

アムステルダム国立美術館(Rijksmuseum Amsterdam)は、年間270万人以上の人たちが訪れる世界有数の美術館です。同美術館の教育チームでは、10年以上前から絵画内の特定の対象物や細部に注意を向けてもらうことを目的とした「解説文」を導入しています。さらに最近では、美術館では歴史的考察、なかでもオランダ植民地時代の歴史に関する考察を促すために、新しい「解説文」の作成の試みを始めています。これらの「解説文」は、鑑賞者の意識をさらに広範な社会的・歴史的文脈に向けさせ、作品への批判的な関与を促すことを目的としています。

調査では、3つの異なる「解説文」で条件を比較しました。(1)元の「解説文」(注意を誘導することに重点を置いているもの)、(2)新しい「解説文」(歴史的認識に重点を置いているもの)、(3)「解説文」なしの3種類の対照条件です。調査では、美術館の通常の開館時間中の来館者の眼球運動を記録するために、Tobii Pro グラス3(100Hz、ワイヤレス)が使用されました。調査には、16歳から60歳以上の様々な来館者が参加してくれました。その結果、Tobii Pro グラス3は、信頼性が高く、素早くセットアップできる優れたツールであることがが証明されました。以前の研究では、Tobii Pro グラス3は子ども達にも使用され、効果を発揮しました。

動画では、美術館で記録された生のデータをご紹介しています。

データの解析にはTobii Pro ラボが使用されました。このソフトウェアは、学生にも扱いやすいインターフェースを備えており、データ取得の準備から分析までを容易に行うことができます。オートマッピング機能が搭載されており、被験者のアイトラッキングデータ(ダイナミックビデオとして記録)と絵画の静止画像をマッピングすることができます。さらに、AOI(Areas of Interest)ツールを使用することで、「解説文」に記載された部分、視覚的に注目してほしい詳細部分、絵画のグリッドベースの分割など、特定の領域を定義することができます。Tobii Pro ラボの幅広いメトリックスにより、研究者はこれらの定義済みのAOIを横断してデータをエクスポートし、比較することができます。予備調査の結果、アイトラッキング調査によって、注意を誘導するようにデザインされた「解説文」が、鑑賞者の視線パターンにどのような影響を与えるのかが明らかになりました。

この録画では、Tobii Pro ラボのマッピング機能を使って、1つの録画の視線データを静止画像に自動的にマッピングしている様子を見ることができます。

Tobii Pro Lab AOIs
Tobii Pro ラボのAOI機能により、あらかじめ定義された領域で、静止画像上に簡単にAOIを描画することができます。
Heat map on museum painting
Tobii Pro ラボで作成された注視時間のヒートマップ。

研究チームでは、将来的に、リアルな環境での他の美術館との共同研究の展開を考えており、議論を進めています。

Tobii Pro グラス3は、研究室の外で、リアルで自然な環境でアイトラッキングデータを取得できるため、今回のような研究には不可欠です。
Zsofia Pilz(Tobiiアカウントマネージャー、ライデン大学大学院博士課程在籍)
Tobii expert with Ruks students
Tobii Pro グラス3を装着したZsofia Pilzと学生のGoda Šimkonytė氏およびTobias Helleman氏。

Zsofia Pilzは、実際の調査でアイトラッキンググラスを使用する際のコツをいくつか教えてくれました:

  • 可能な限り、1点キャリブレーションを使用してください。この迅速なステップ(通常10秒以内)により、被験者の目の個人差を考慮することができ、データの質を大幅に向上させます。

  • 事前にデータ分析を計画してください。どのような指標を抽出して、どのように分析するかを知っておくと、後でかなりの時間を節約できます。事前に調査計画を調整しておく方が、データ収集後に問題を修正するよりもはるかに効率的です。

HATlabについてもっと知る

HATLab: https://francescowalker.com/hatlab/

関連研究:

Walker, F., Bucker, B., Snell, J. et al. Age-adapted painting descriptions change the viewing behavior of young visitors to the Rijksmuseum. Sci Rep 14, 22880 (2024).

Walker F, Bucker B, Anderson NC, Schreij D, Theeuwes J (2017) Looking at paintings in the Vincent Van Gogh Museum: Eye movement patterns of children and adults. PLoS ONE 12(6): e0178912.

  • 執筆者

    Zsofia Pilz

  • 読了時間

    6分

Author

  • Zsofia Pilz Tobii event speaker

    Zsofia Pilz

    Account manager, Tobii and Ph.D. candidate, Leiden University

    Zsofia studies children's visual perception in authentic art museum contexts. Her latest work investigates different types of labels in the Rijksmuseum in Amsterdam. Her research aims to improve the museum experience, especially for children.

関連コンテンツ