2 students working on STEM education design

調査分析サービス リサーチャーインタビュー

STEM教育の未来

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  • 執筆者

    Dr. Mirjana Sekicki

  • 読了時間

    5 min

  • 2022年12月6日

アイトラッキングを使って、最新の教育がどのようにSTEM教育を推進するかという研究を行ったJochen Kuhn教授にインタビューしました。

Dr. Jochen Kuhn

Jochen Kuhn教授は、ドイツ・ミュンヘン大学(LMU)の物理教育の教授です。現在、スマートフォン、タブレット、AR/VRなどのマルチメディアでの学習環境を利用したSTEM教育を取り入れた物理教育の研究を行っています。研究内容には、STEM教員研修、教育現場での人工知能を使った学習、学習や問題解決プロセスに関するアイトラッキング実験などがあります。

研究の目的は?

多くの学生が物理学は日常生活にあまり関係のないものとして認識しています。無味乾燥で抽象的であり、プロセスが理論的で目に見えないからです。

マルチメディア学習を用いて、概念と現象、理論と日常との差を埋めるような表現方法の開発と研究をしています。日常生活でもなじみのある図やグラフなどを使ってマルチメディアで学習することで、学生自ら学んでいくことができます。将来的にはテクノロジーの進歩によってさらなる学習環境の変化が期待されます。様々なメディアを使って学生や教師の教育を充実させています。


学生がどのように物理の実験を設計し問題を解決したかの結果だけではなく、プロセスにも興味があります。そのプロセスを理解することで、うまく学習できるようにサポートし、挑戦できるような後押しができます。

学習支援は個人に合わせてカスタマイズされるべきで、一人ひとりの学生が自分に合った方法やプロセスで、同じ内容を学習できるようにする必要があります。最先端の学習技術と表現方法の研究には機械学習による予測も欠かせない要素になります。

研究を始めるきっかけとなったもの、モチベーションを維持させているものは?

分かりやすい物理学の授業の方法はたくさん考えられます。ですが、マルチメディアを使えば図やグラフだけでなく、動的なアニメーションなど様々な表現方法を組み合わせることができます。これらの方法は、デジタル化が進むにつれて、教育と研究のために発展し続けるでしょう。

また、このような革新的な学習技術の開発・研究を通じて、次の世代の人たちは、データリテラシーやAIリテラシーを身につけ、社会を変えることができます。

つまり、複数の表現方法ができるようになってきたことと、社会を変えることの重要性を感じていることが、私がこの研究をする理由です。

Dr. Jochen Kuhn eye tracking research

これまでの研究での主な成果は?

成果とは呼べないかもしれませんが、急速なデジタル化の中で、教育が社会のニーズや要件から遅れをとっていると認識したことです。社会の発展に歩調を合わせた教育が必要です。

特にドイツでは、タブレットのような日常的なメディアでの教育が体系的に浸透するまでに10年以上かかりました。そのため、今後の発展には新たな切り口が必要です。

教育研究では、スマートフォンやタブレットの次に来るテクノロジーを早期に予測して研究するべきです。検証可能で実践的な学習概念を生み出し研究することで、次世代のテクノロジーが普及する頃には、すぐにその学習方法を取り入れることが出来ます。

国と教育機関が密接に協力しながら、最先端の開発・研究を可能にするための枠組みも必要になるでしょう。

また、教育と研究に力を入れている団体や機関を巻き込むことが大切です。さらに教師は新しいアプローチ方法やテクノロジーを教室で有意義に活用できるようにトレーニングを受ける必要があります。

実験にアイトラッキングを取り入れることで、どのような効果があったか?

次世代教育技術(EDTech)には、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)用のヘッドマウントディスプレイ(HMD)が使われるだけでなく、アイトラッキング技術も採用されると考えられます。

様々なタイプのアイトラッキング技術(スクリーンベース、ウェアラブル、VR/ARのHMDなど)を使用することで、異なる状況での生徒の学習中の視線を調べ、学習戦略の成功と失敗を見分けることができます。

さらに、視線データをAIアルゴリズムに学習させ、その視線パターンを使用して、問題をうまく解決できるかどうかを予測することができます。誤った見方や間違った答えを選ぶ前に、視線データに基づいてその人にあったサポートを提供することができます。

そのためには、視線データを活用した教育ができる教師が必要になり、教師の育成も重要になってきます。

Dr. Jochen Kuhn STEM education research

これからアイトラッキングを取り入れる方へのアドバイスは?

アイトラッキングの分析が自身の研究でどのような役割を果たすべきかを総合的に考える必要があります。

もし、アイトラッキングを軸とした研究でなければ、設備に投資するよりも、研究パートナーと協力して調査し経験を積むことをお勧めします。ですが、アイトラッキングを軸とした研究を始める場合は、最初からアイトラッキング機器や人材に投資する方がいいでしょう。

関連情報

アイトラッキング技術を用いた最新の研究発表をご紹介します。

Becker, S., Küchemann, S., Klein, P., Lichtenberger, A. & Kuhn, J. (2022). Gaze patterns enhance response prediction: More than correct or incorrect. Physical Review Physics Education Research, 18(020107).

Dzsotjan, D., Ludwig-Petsch, K., Mukhametov, S., Ishimaru, S., Küchemann, S., & Kuhn, J. (2021). The Predictive Power of Eye-Tracking Data in an Interactive AR Learning Environment. Adjunct Proceedings of the 2021 ACM International Joint Conference on Pervasive and Ubiquitous Computing and Proceedings of the 2021 ACM International Symposium on Wearable Computers, September 2021, 467–471

Klein, P., Becker, S., Küchemann, S., & Kuhn, J. (2021). Test of understanding graphs in kinematics: Item objectives confirmed by clustering eye movement transitions. Physical Review Physics Education Research, 17(1), 013102.

Kumari. N., Ruf, V., Mukhametov, S., Schmidt, A., Kuhn, J., & Küchemann, S. (2021). Mobile Eye-Tracking Data Analysis Using Object Detection via YOLOv4. Sensors, 21(22), 7668. MDPI AG.

教授の研究室の詳細については、ウェブページをご覧ください。

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  • 執筆者

    Dr. Mirjana Sekicki

  • 読了時間

    5 min

  • 2022年12月6日

Research spotlight interviews

このインタビューシリーズでは、研究者たちが、幅広い用途でアイトラッキングをどのように使ってきたかを紹介しています。

Interviewed by

  • Tobii Pro - Dr. Mirjana Sekicki - Scientific Research Account Manager

    Dr. Mirjana Sekicki

    EYE TRACKING RESEARCH ADVOCATE, TOBII

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