Person reading on an e-reader

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iPadと電子書籍リーダーを用いた場合の、読書の快適さを比較

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  • 執筆者

    Ieva Miseviciute

  • 読了時間

    2分

多くの人が毎日近くのモノを見る機会が多いです。電子機器を使用して読書をしたり、ビデオを見たり、仕事をすることがよくあります。しかし、これらの機器を長時間使用することで、ドライアイや刺激感、眼精疲労、注意力の低下、パフォーマンスの低下など、さまざまな目の症状や行動の変化が引き起こされる、コンピュータビジョン症候群(CVS)と呼ばれる症状になる可能性があります。 

このCVSは、コンピュータなどの電子機器を使い読書をしている時に瞬きが減少することが原因とされています。しかし、これらの電子機器が読書中に瞬きの回数に影響を与え、目の不快感を引き起こす可能性があるかどうかは未だ不明です。 

読書に使われる電子機器は、紙の本を模した電子書籍リーダーと、iPadなどの液晶画面の2つのタイプがあります。液晶画面を使った読書は、より明るい光を放射するため瞳孔が収縮し、瞬きの回数が減少することが考えられるため、紙や電子書籍リーダーと比べて目に負担をかける可能性があります。 

スペインのZaragoza大学の研究者は、iPadや電子書籍リーダーを使って読書をする際の視覚的な不快感を評価しました。被験者達がiPadや電子書籍リーダーを使い21分間読書をしている際、Tobii Pro フュージョンを使って彼らの眼球運動を追跡しました。研究者たちは読書中の瞳孔径、停留、サッカード、瞬きの回数など視覚的指標を調べ、読書中にどのような視覚的な不快感が生じるかについて調査をしました。さらに、読書セッションの前後で、被験者らの目の収差(視力の焦点を合わせる能力)と網膜の厚さを測定し、彼らの目の健康状態についても詳しく調査しました。 

この研究の結果、iPadと電子書籍リーダーを使用して読書すると、停留とサッカードのパターンに微妙な違いが見られ、iPadを使用して読書する方が停留が長い傾向がありました。また、電子書籍リーダーを使って読書すると瞬きをより多く行う傾向があり、2つのデバイス間でドライアイを促進する可能性があることを示唆しています。しかし、これらの差は統計的に有意ではなく、iPadと電子書籍リーダーの間で目の負担や視覚的な不快感については、明確な違いがあるとは言えないことがわかりました。 
研究者たちは2つのデバイスで読書をした場合、波面収差解析装置と呼ばれる方法で測定した視力の質や網膜の厚さに変化は見られなかったと報告しています。 

アイトラッカーと波面収差解析装置を使用することで、電子機器を利用した際の視覚能力と目の健康を客観的に測定できることが示されました。ただし、この研究では21分間の読書後に視力に及ぼす影響を評価したに過ぎず、電子機器の長期的な使用が視力や目の健康にどのような影響を与えるのかを調査するには、さらなる研究が必要です。 

参考文献

Orduna-Hospital E, Munarriz-Escribano M, Sanchez-Cano A. Visual Quality, Motility Behavior, and Retinal Changes Associated with Reading Tasks Performed on Electronic Devices. Life. 2023; 13(8):1777.

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  • 執筆者

    Ieva Miseviciute

  • 読了時間

    2分

著者

  • Tobii employee

    Ieva Miseviciute, Ph.D.

    SCIENCE WRITER, TOBII

    As a science writer, I get to read peer-reviewed publications and write about the use of eye tracking in scientific research. I love discovering the new ways in which eye tracking advances our understanding of human cognition.

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