Child sitting in front of the computer playing games

研究/調査/レポート

視線入力でゲームをする場合、自閉スペクトラム症児の注意の発達にどのような影響があるのか?

カテゴリー詳細

  • Written by

    Estefania Dominguez

  • Read time

    2 min

自閉症スペクトラム障害(ASD)は、社会的な相互作用やコミュニケーション、行動に関する困難を持つ神経発達症のことです。ASDの子供たちにとって、注意力の問題が重要な課題の1つです。情報がたくさんある状況で注意を向ける能力は、子どもの発達に伴い、成長や学習において欠かせないスキルの1つとなります。

Lori-Ann R. Sacrey博士と彼女のチームは、ASDと診断された幼児と定型発達の同年齢の幼児の視覚的注意パターンを、目を使って操作できる双方向のゲームを使用し比較しました。

ASD児と定型発達児を比較した研究により、いくつかの側面で異なる変化があることが確認されています。その一つが「共同注意」と呼ばれるもので、同じ対象や出来事に対して他の人と注目を合わせる能力です。もう一つが、同じ刺激に対する注意を維持する能力と、その刺激から注意を切り替える能力もあります。文献によると、ASD児は共同注意のエピソードが少なく、彼らは特定の刺激に対する注意を長時間維持する傾向があり、その一方で別の刺激に注意を移す際の遅れが見られることも報告されています。

この研究では、ASDと定型発達の幼児グループに焦点を当てて、子供たちの持続的な注意力、注意を切り替える能力、そして認知制御を測定するための新しいコンピュータゲームを使ってテストを行いました。ここではアイトラッキング技術を使用し子供たちの眼球運動を追跡し、その情報を使ってゲームを操作します。アイトラッキングによって、子供たちがどの部分を見ているかを把握することができ、子供たちの眼球運動に基づいてゲームの刺激を制御し、子供たちと対話することが可能になります。

ASD幼児は、共同注意を始めるスキルが低下し、また持続的な注意を保つ傾向もありました。両グループは、注意を別のことに切り替える課題や認知制御に関する課題においては同じような結果を示しました。注意力、コミュニケーション能力、学習能力を向上させる基盤となる、注意力に関する強みを持っている可能性が示唆されました。

つまり、ASD児の初期特徴を持つ幼い子供たちに関して、注意の発達を向上させる方法として、視線競合に注目するアプローチが有効だとわかります。注意力を育むことは、言語の習得や社会的な相互作用の始まりや維持、学問的な環境での学習など、さまざまな分野に長期的な影響を及ぼす可能性があるのです。

参考文献

Sacrey, L.-A. R., Zwaigenbaum, L., Elshamy, Y., Smith, I. M., Brian, J. A., & Wass, S. (2023).

Comparative strengths and challenges on face-to-face and computer-based attention tasks in autistic and neurotypical toddlers. Autism Research, 1–11.

注目の論文

アイトラッキングの最新の研究にご興味のある方はぜひご覧ください。

カテゴリー詳細

  • Written by

    Estefania Dominguez

  • Read time

    2 min

    カテゴリータイプ

    • 研究/調査/レポート

    対象製品

    • アイトラッキング製品

    対象別ソリューション

    • 学術研究

著者

関連記事

Sad little boy
事例

自閉症におけるアイトラッキング

従来の自閉症研究における視線計測の応用は、「眼を見る時間」というような視線の停留時間の比較に基づいて行われてきたが、知見は必ずしも一致していない。研究チームは自閉症の客観的な評価指標の開発に取り組み、Tobii アイトラッカーから出力される 「 いつ、どこを見ているか 」 についての視線計測データの時空間パターンを解析することによって、例えば定型発達群と自閉症群を従来の方法よりも鋭敏に判別する方法を確立した。

さらに詳しく