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Comatose patient in a hospital bed

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アイトラッキングで昏睡患者の微妙な反応を検出

外傷性脳損傷の重症な例として、意識不明の状態が長く続く昏睡状態があげられます。現在、昏睡患者の反応性を評価する主要な方法は、臨床検査の中で特にベッドサイドでのアイトラッキング評価です。

アイトラッキング評価は、医療従事者が患者の視覚刺激に対する反応を観察し、停留と視線追従の眼球運動に注目する方法です。しかし、この方法にはいくつかの制約があります。評価の正確性は検査者の経験に大きく依存しており、誤った分類が発生する可能性があるからです。さらに、生命維持治療を中止するかどうかの決定は、患者が長期間にわたって無反応であるかによって判断されることが多いです。つまり患者の反応性を最も正確に評価することが極めて重要となります。

Miami大学、大学の研究者らは、Tobii のウェアラブル型アイトラッカーを用いて昏睡状態の患者の反応を評価し、その結果をベッドサイドでの標準的な臨床検査と比較する2つの研究を行いました。

最初の研究では、昏睡状態の患者に、指、検査者の顔、水平に動く鏡、視運動反応テストなど、さまざまな視覚刺激を与えました。その結果、臨床検査では10人中2人が「追跡していない」あるいは「不確実」と判定されました。しかし、アイトラッカーの記録ではこれらの患者が実際に「追跡している」と判断されました。そして、アイトラッカーを使用している患者全員が、6ヶ月後の経過観察中に意識を回復したことがわかりました。

もう一方の研究では、昏睡患者の反応は刺激の種類が重要であるかということを検証しました。研究者たちは、昏睡患者に30秒間のビデオを見せ、その間の眼球運動をウェアラブル型アイトラッカーで追跡しました。このビデオには、ダンサーやスケートボーダー、スパイダーマンなどのダイナミックなキャラクターで構成されており、視覚的に没入できる刺激でした。アイトラッカーで眼球運動を注意深くモニターした結果、10人中3人の昏睡患者が刺激に追随する兆候を示しました。しかし、これらの患者は臨床検査では誤って「追跡していない」と分類されていました。最初の研究と比較して、より没入型のビデオが1人の患者をさらに「追跡している」と分類されました。

これらの研究から、昏睡患者の視線追跡反応は、アイトラッカーを使って非常に敏感に検出できることが示されました。特に、視覚的に没入感のあるビデオを用いることで、微妙な視線追跡の違いを区別するのに役立つことがわかりました。このことから、アイトラッキングは昏睡患者の意識を理解するための新しい方法として提案され、患者の状態をより正確に評価し、将来の回復の見込みを予測できるかもしれないことが示唆されています。

参考文献

Aklepi et al., (2023). Covert Tracking to Immersive Stimuli in Traumatic Brain Injury
Subjects with Disorders of Consciousness. Journal of Neurotrauma.

Alkhachroum et al., (2023). Covert Tracking to Visual Stimuli in Comatose Patients
With Traumatic Brain Injury. Neurology, 101(11), 489–494.

注目の論文

アイトラッキングの最新の研究にご興味のある方はぜひご覧ください。

  • 執筆者

    Ieva Miseviciute

  • 読了時間

    3分

Author

  • Tobii employee

    Ieva Miseviciute, Ph.D.

    SCIENCE WRITER, TOBII

    As a science writer, I get to read peer-reviewed publications and write about the use of eye tracking in scientific research. I love discovering the new ways in which eye tracking advances our understanding of human cognition.

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