海洋掘削作業の安全性向上

海洋掘削は複雑で危険な作業であり、事故に繋がる可能性があり、非技術的な問題の一つとして「状況認識の欠如」があげられます。石油掘削施設「ディープウォーター・ホライズン」での大規模な爆発事故以降、研究者や業界関係者は、大規模な事故における人間の役割を理解する研究に関心を寄せています。

状況認識とは、自分の周りで起きていることを理解し、何が起こっているかを知り、潜在的なリスクや変化に注意を払うことです。これは、状況を "把握 "するようなもので、賢明な判断を下し、安全を維持するのに役立ちます。アイトラッキングは、掘削オペレーターが注意散漫であるか、疲労していて適切に集中できていない可能性があるかどうかを評価するのに役立つかもしれません。

Lahore工科大学（パキスタン）、Punjab大学（パキスタン）、Oklahoma大学（アメリカ）の研究者らは、掘削シミュレーションの環境で、初心者と熟練者の状況認識を評価するため、彼らの目の動きを比較しました。被験者らは、リアルタイムな油井のデータを使用し、Tobii Pro TX300のアイトラッカーによって眼球運動が記録されました。初心者は、Oklahoma大学石油工学科の学生で、熟練者はこの分野で30年以上の経験を持つ業界のプロでした。

アイトラッキングデータから、熟練者は異常を正しく認識しそれを確認したのに対し、初心者は異常に視線を向ける頻度が少なく、確認しなかったことがわかりました。このことから、アイトラッキング技術は、作業員の注意散漫さや注意力不足を検出するのに役立つことが示唆されます。具体的な使用例として、リアルタイムのアラームフィードバックシステムが考えられます。初心者が訓練中に自分の注意の欠陥を認識し、時間の経過とともにパフォーマンスを向上させるのに役立つでしょう。

つまりアイトラッキングは掘削作業者の状況認識を評価するために役立つ効果的でコストパフォーマンスが高いツールと言えます。著者らは将来的に、この技術を実際の掘削作業で活用し、海洋作業員の安全性向上に貢献したいと考えています。

参考文献

Raza, M., Kiran, R., Ghazal, S., Jeon, J., Salehi, S., Kang, Z., & Cokely, E. (2023). An Eye Tracking Based Framework for Safety Improvement of Offshore Operations. Journal of Eye Movement Research, 16(3).