ドライバーがどのように環境を視覚的にスキャンするかを理解することが、新しい道路安全対策を開発するための基盤となる。Dario Babić博士(ZAGREB大学 交通運輸科学部准教授)
Tobiiでは最近、オンラインセミナーで、ドライバーとパイロットの安全輸送に関する3つのプレゼンテーションを行いました。
発表者は、視線行動を捕捉し、視覚的注意を理解するために、リアルな環境で調査を行いました。具体的には、日中と夜間の実際の運転および飛行のシナリオの他、さまざまなシミュレーション環境でも調査研究が行われました。研究には、TobiiのウェアラブルアイトラッカーTobii Proグラス3が使用されました。
この研究により、ドライバーにとっての視認性と道路標識の質の重要性、航空機検知における課題、事故削減と管制官の訓練強化のためのソリューションが明らかになり、交通機関のより安全な未来への可能性が広がっています。
ドライバーの交通安全の研究
Dario Babic博士(Zagreb大学准教授)によるドライバーの行動に関するアイトラッキング研究。
歩行者の視認性に関する研究
リアルな夜間運転での研究では、ドライバーは、ネオン反射ベストを着用した歩行者に、無地や暗い服装の歩行者よりも5倍ほど遠くから気づきました。ネオン反射ベストは平均して200~250m先から認識されましたが、無地や暗い服は30~50m先でしか気づかれませんでした。さらに、ドライバーは反射ベストに対して、より多く注意を向けていました。これは、反射ベストの視認性がドライバーの集中力と知覚に対して、積極的に作用していることを意味しています。
道路標識の質がドライバーの快適性に与える影響Babic博士は、シミュレーション運転中に、道路標識の質が高いほどドライバーの快適性と認知性が高まり、逆に、質の悪い標識ほど認知活動や快適性が低下することを見出しました。
都市環境におけるドライバーの注意散漫
同じくシミュレーション運転の研究では、携帯電話の使用によって道路標識の視認数が著しく低下することが分かり、携帯電話がいかにドライバーの注意散漫につながるかが明らかになりました。
オートバイの安全性
Babic博士は、オートバイのライダーに対する警告システムの強化をめざした研究を行いました。田舎道を走るオートバイのライダーを対象に、リアルな環境でアイトラッキングを用いて、新しい標識と反射マーカーの増加について調査を行いました。その結果、新しい標識に気づいたライダーの割合が高いことが分かり(約80%)、より効果的な標識や表示板の提案につながりました。
見慣れない道路標識のデザイン
実験室で行われた研究では、道路標識のデザインはシンプルな方が交通安全の向上につながることが証明されました。より複雑なデザインは注目を集めるものの、見慣れないために理解度が低い可能性がありました。
パイロットの輸送の安全性研究
Dylan Amerson氏(ミシシッピ州立大学ラスペット飛行研究所リサーチエンジニア)によるパイロットの視覚捕捉パフォーマンス研究。
探知・回避システム
これは、パイロットに周辺の航空機の存在を警告するための代替方法に焦点を当てた研究です。他の航空機の発見や注意散漫をはじめとした、さまざまなパイロットの行動を調査しました。ミシシッピ州立大学THE RASPET飛行研究所 研究エンジニアのDylan氏のチームは、自動化されたシステムがどのように機能するかの基盤として、パイロットのパフォーマンスを特徴付ける要因を究明することを目指しました。
パイロットの視認能力
この研究によって、航続距離が短くなるほど、パイロットが他の航空機を視認する能力が大きく低下することが明らかになりました。Dylan氏は、「4分の1海里以下の短い距離では、テスト中は50%もの航空機を見落としていました。 」と報告しています。
Tobii Pro グラスによるコックピットでのスキャン
続けて、Dylan氏は次のように述べています。「Tobii Pro グラスを使うことにより、実際のコックピットで、パイロットがどのように周囲をスキャンしているかの理解が深まりました。今後の研究では、年齢や経験のような被験者の変数の影響を理解し、まぶしさや機内の航空情報表示のような環境要因を検証していく予定です。」
技術の進歩
約500万回におよぶシミュレーションから得られた遭遇データから、より良い結果を得るためには、近くを飛行している航空機の情報をコックピット内でパイロットに素早く伝えることの重要性が明らかになりました。
接近してくる航空機のサイズと速度は、パイロットがこれらの航空機を発見する能力にどのように影響するのでしょうか?Dylan Amerson氏(ミシシッピ州立大学ラスペット飛行研究所リサーチエンジニア)
航空管制官(ATC)の安全性研究
オクラホマ大学准教授Ziho Kang博士によるVR空港管制塔シミュレーションにおける視覚スキャンパターン研究。
物理的バーチャルリアリティ環境
.Kang博士のデータは、連邦航空局(FAA)の研究室で収集されました。この研究室は、空港タワーに見えるようにシミュレートされた背景を持つ実際の空間です。これは閉鎖的な没入型VRではなく、大型ディスプレイを接続した物理的なVR環境で、管制官の練習や訓練シナリオのために活用されています。
航空管制官(ATC)の視線スキャンパターン
Kang博士は、ベテランの航空管制官(ATC)の視線データを収集し、AOI(関心領域)をモデル化しました。航空管制官が航空機と通信している間のAOI間の特定の動きのパターンを見ることができます。これは、事故を未然に防止できるだけでなく、新人の訓練にも役立つものと期待されています。さらにKang博士は、有向加重ネットワーク処理を活用して、視覚スキャンパターンをクラスター化し、視覚エントロピーを計算することで、航空管制官の行動と眼球運動の変動に関する洞察を見出しました。
ベテラン管制官の眼球運動のデータを収集し、彼らの視覚スキャンパターンを調査しました。起こりうる事故を減らし、新人の訓練レベルを向上させるために、視覚スキャンパターンをクラスター化し、優位な結果が得られるかどうかを精査できました。Ziho Kang博士(オクラホマ大学産業システム工学准教授)
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