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Hair care products - FineToday

事例

髪に宿る美意識を、視線から   科学する

株式会社ファイントゥデイ様

コロナ禍以来一層高まる毛髪の高度なホームケアニーズ。株式会社ファイントゥデイ様では、女性の毛髪に対する感性評価にアイトラッキングを活用。従来の調査では見えてこなかった潜在ニーズを引き出し、新たな評価手法の開発、ならびに製品開発への応用を目指しています。

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■Tobiiは、「人」に焦点をあてた研究を伴走支援。

物理的特性や化学的性質に関する研究は多様なアプローチが存在しますが、近年は、「人」に焦点を当てた研究手法への関心が高まり、その中でアイトラッキングが有力な手段として注目を集めています。 Tobiiでは、このような研究の発展に伴走する調査・分析サービスを提供しています。今回は、具体的な事例として、株式会社ファイントゥデイ様の取り組みをご紹介いたします。(研究成果は、第26回日本感性工学会(2024年9月12日~14日・東京都)にて発表されました。)

■高品質なホームケア製品へのニーズが高まっています。

コロナ禍をきっかけにご家庭でのヘアケアへの需要が高まり、内容も高度化しています。コロナが猛威を振るった期間は、感染予防を意識して美容サロンへ行く機会が減りました。それまで、多くの消費者は本格的なヘアケアを美容サロンに委ねていましたが、その機会が減ったことで、自宅でできる高度なヘアケアへの需要が高まってきたのです。
また、顔の半分がマスクで覆われている状況で、女性の美意識がこれまで以上に髪質やヘアスタイルに向かっていったという背景もあります。この傾向は今日も続いており、高機能なドライヤーやヘアアイロン、高品質なシャンプーやトリートメント等へのニーズが拡大しています。

さらに最近では、ライブコマースを通じたヘアケア製品の購買も増えました。インフルエンサーがSNS上で公開するBefore・Afterの写真や動画の影響力は大きく、製品使用後の仕上がりを重視した消費行動はますます活発になっています。

■専門家のミクロな視点に加え、お客様のマクロな視点を取り入れた評価方法が求められていました。

ヘアケア業界では、製品の研究開発にあたって、専門家が見た目や部分的な質感に対して評価を行うのが一般的ですが、評価者によるブレや毛髪全体に対する消費者の視点の不足が課題でした。昨今のトレンドもふまえ、とくに毛髪の仕上がりについて消費者の美意識を掘り下げ、製品の評価に反映していく必要があると考えました。

ファイントゥデイグループ様は、2021年に、資生堂からパーソナルケア事業を引き継ぐ形で設立され、パーソナルケア製品の生産・マーケティング・販売等を主な業務とされています。株式会社ファイントゥデイ様は、その中でもマーケティング・販売等を担っています。同社で、ヘアケア製品の基礎研究と製品化に向けた研究を担うご担当者様は、Tobiiのアイトラッキングが紹介されたテレビ番組を観ており、その存在をご存知でした。さらに、上長の方も以前、「肌の隠れた悩み」という感性評価にアイトラッキングを使った先行研究をご存じだったことから今回の毛髪を対象とした調査研究にアイトラッキングを活用できるのでは?と考えました。

これまで、毛髪一本一本やキューティクル・分子構造など、ミクロに焦点を当てた研究は行われてきましたが、今回はアイトラッキングを活用し、毛髪全体を捉えるマクロな視点から、毛髪の仕上がりに対する消費者視点の評価を実現し、潜在的な美意識を研究テーマとしたいと考えられたのです。

■アイトラッキング調査で女性たちの潜在的な美意識が見えてきました。

調査研究は、Tobiiの調査・分析チームのサポートを受け、美容に関心のある日本人20代女性、40名を対象に行われました。ダメージやうねりのある毛髪とない毛髪など、様々なパターンのヘアスタイルを用意し、「バスに乗っていて、前の席に二人の女性が座った」という設定で2種類のヘアスタイルを並列に提示し、被験者に観察してもらいました。
ヘアスタイルが同じでもタスク指示によって視線が変わることが予想され、「好ましい髪はどちらか」聴取する群(20名)と、「好ましくない髪はどちらか」聴取する群(20名)に分けました。
5パターンのヘアスタイルについて、選択した毛髪の視線停留時間(見た時間)と選択しなかった毛髪の視線停留時間を比較したところ、「好ましい毛髪」を選択するよう指示された群は、選択した毛髪とより長く見た毛髪の一致率は68%でした。
一方「好ましくない毛髪」を選択するよう指示された群の一致率は90%にのぼりました。
この結果から、タスクが示されない自然な状態において、人は「好ましい」ヘアスタイルより「好ましくない」ヘアスタイルを長く見る可能性が示唆されました。

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■同社では、消費者の潜在意識をさらに引き出すために、一段と高度なアイトラッキングの活用方法を検討されています。

同社のご担当者様は、日本感性工学会で、このアイトラッキング調査の成果を発表されました。学会参加者の多くの方がその発表に高い関心を示し、会場は熱気に包まれました。

さらに、社内的にも、研究開発部門だけでなく、全社的に評価される結果となり、製品の改良に対するムーブメントが巻き起こっています。

今後は、年代・人種・性別を変えて継続的にアイトラッキング調査を進めていく考えで、Tobiiのグローバルなネットワークを活用される可能性もあります。引き続き多種多様なデータ収集を通じて、幅広く消費者の潜在ニーズを引き出す取り組みが進められています。

まずは、今回の調査研究でTobiiから強力なご協力をいただき、大きな成果の第一歩を踏み出すことができたことに感謝しています。私自身、楽しく研究に取り組めました。Tobiiのアイトラッキング技術に助けられて、これまで分からなかったことや雰囲気だけで評価していたことが明らかになり嬉しくなりました。 今後は、この技術がもっと広がり、どの会社でも使える業界標準の評価方法になっていってくれたらいいなと思っています
株式会社ファイントゥデイ ビューティーイノベーションセンター R&D本部 基礎・基盤研究部 先行技術開発G 大竹 真子様
  • 執筆者

    Tobii

  • 読了時間

    5分

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