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ウィリアムズ症候群におけるpupillary contagion

社会的相互作用に欠けているもの

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  • 執筆者

    Ieva Miseviciute

  • 読了時間

    3 min

アイコンタクトは、私たちが人と心を通わせるために不可欠な要素です。アイコンタクトは相手の感情や考えをより理解することを助け、社会的交流に関するポジティブな感情を高めます。2人の人間が目を合わせると瞳孔はその相手の瞳孔サイズに適応し変化します。この現象は、pupillary contagionと呼ばれています。この現象は、早ければ生後4ヶ月で現れ、社会的相互作用の中で社会的な繋がりや共感、相互信頼を築くために役立っています。

ウィリアムズ症候群(WS)は、高い社会的意欲、他人の顔への注目、社会的相互作用を楽しむという特徴がある遺伝的疾患です。WS疾患を持つ人は、社会的意欲が高いのにもかかわらず、しばしば社会に溶け込むことに苦労しています。彼らは人の感情や考えを理解すること、社会的な絆を形成すること、他人の信頼性を評価することなどが苦手なのです。

WS疾患を持つ人がとても社会的な性格であるにもかかわらず経験する、社会的困難の根本的な理由を解明する鍵を、pupillary contagionは握っているかもしれません。

Johan Lundin Kleberg博士が率いるスウェーデンとイギリスの大学の研究チームは、WS疾患を持つ人の瞳孔サイズを調べ、一般的な幼児、小児、成人の瞳孔の大きさの変化と比較しました。実験参加者には、収縮した状態、中程度、拡張と異なる瞳孔の大きさの人間の目の画像を見てもらい、その時の視線の動きと瞳孔の大きさをTobii Proアイトラッカーで記録しました。

WS疾患を持つ方たちは、持たない人たち(比較対象群)と異なり、pupillary contagionの効果を示しませんでした。一部のWSを持つ方にpupillary contagionの効果が高く出ましたが、この場合は、社会的相互作用中の視線の動きに敏感であるなど、社会的コミュニケーションに関連する自閉症の症状が軽いことと相関していることが観察されました。

本研究の結果は、社会的相互作用におけるpupillary contagionの欠如が、WSを持つ方が直面する社会的課題の重要な要因のひとつである可能性を示唆しています。WS患者は、社会的相互作用の中で信頼を築くことに苦労することが多く、この能力はpupillary contagionと複雑に関連していることが推察されます。

参考文献

Kleberg, J.L., Hallman, A.E.Z., Galazka, M.A. et al. No transfer of arousal from other’s eyes in Williams syndrome. Sci Rep 13, 18397 (2023)

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  • 執筆者

    Ieva Miseviciute

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    3 min

著者

  • Tobii employee

    Ieva Miseviciute, Ph.D.

    SCIENCE WRITER, TOBII

    As a science writer, I get to read peer-reviewed publications and write about the use of eye tracking in scientific research. I love discovering the new ways in which eye tracking advances our understanding of human cognition.

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