何かを変えようとするとき、その根拠が必要となります。トビーのアイトラッキングは、言語化が難しかった目視検査工程の現状と課題を、データで示してくれました。 そのため、社内にも説得力を持って工程の変更を提案することができました。このデータは、技術教育にも活用できていて、結果として、目視検査員の育成期間の半減を実現することができました。現)第一三共株式会社 テクノロジー統括本部 製薬技術本部 製剤技術研究所 / 導入当時)第一三共プロファーマ株式会社 平塚工場 2部2課・2部4課 茂垣 貴久様

事例
DX戦略:アイトラッキングで 目視検査を改善
第一三共プロファーマ様
カテゴリー詳細
執筆者
Tobii
読了時間
5分
見逃しが許されない医薬品の目視検査で、育成期間を短縮。 第一三共プロファーマ様は、DX戦略でアイトラッキングを活用。
背景
市場の変化に対応した目視検査員のスムーズな育成が課題に。
今、製薬業界では静かな地殻変動が起こっています。ジェネリック医薬品の普及を推奨する政府の方針を受けて、多くのメーカーがジェネリック医薬品市場に参入。特に、生活習慣病などの治療に使われる固形剤ではジェネリック医薬品の割合が増えています。
こうした市場の変化に対応して、先発医薬品メーカーは、固形剤から注射剤の製造へと軸足を移しつつあります。
第一三共プロファーマ株式会社様でも、ここ最近、注射剤の生産量を増加させています。
品質の高い注射剤を市場に提供しつづけるためには、人による製品の目視検査が不可欠です。
同社では、検査工程ごとに厳しい検査基準を設け、その認定試験に合格した作業員だけが目視検査の業務に就ける、という万全の体制を整えています。
しかし、目視検査員が一人前に育つまでには一年ほどかかる場合もあり、検査員の育成には時間がかかっていました。今後、生産量の増大に伴って、検査員も増やしていく必要があるため、育成期間の短縮が大きな課題となっていました。
メソッド
DXを活用した育成のためのツールとしてアイトラッキングに着目。
同社では、3~4年前から、全社的にDXを活用した課題解決に取り組んできました。
この目視検査員の育成にも、DXツールを導入すべく、何社かの製品を候補に、検討を重ねていました。
その一環として、トビー・テクノロジーのアイトラッキングについてのプレゼンを受け、目視検査員の育成期間を大きく削減した様々な企業の実績を確認し、アイトラッキングは、同社が求めていたDXツールだと確信。導入に踏み切りました。
トビーでは、現場で検査員の皆様にウェアラブル型アイトラッカーを装着していただき、視線計測とインタビューを実施。熟練者と新人の違いなどを分析し、熟練者の「ノウハウ」を可視化していきました。
結果
アイトラッキングの分析結果から工程の検査項目を再配分。長い場合は1年を要した育成期間を6か月に軽減。
注射剤には、「液剤」と「凍結乾燥製剤」がありますが、同社では特に、「凍結乾燥製剤」の目視検査員の育成が急がれていました。
「凍結乾燥製剤」の目視検査では、数ある検査項目を複数の検査員が分担して行っていました。しかし、検査項目によっては、難易度の高い検査があり、その検査での資格取得が難しく、検査員育成にも影響が表れていました。
そこで、同社では、アイトラッキングを活用して、何がネックになっているのかを解析しました。
視線計測の結果、難易度の高い検査では、目の動きが激しいことが判明しました。そこで、その検査項目を再配分して、目の動きの負担を軽減。
これにより、その検査で資格を取得できる人も増加していきました。
同社では、他の検査でも項目の見直しを行い、より確実に、より迅速に目視検査が行える体制を整えています。
さらに、視線計測の後のインタビューを通して、教える側である熟練者も、自身の検査方法に自信を持つことができ、教育の面でも良い効果が出ています。
こうした成果が相まって、同社では、従来、長い場合は1年ほどかかっていた目視検査員の育成期間を6か月に短縮させることに成功しました。
同社では、さらにアイトラッキングの活用領域を広げていく予定を立てています。
別の建屋のラインで、検査のスピードを向上させるために、自動検査装置と検査員による目視検査を組み合せた検査体制を作る計画が進められています。この工程では、自動検査機が見切れない部分を目視検査で見極めていく必要があり、ここでも、アイトラッキングの活用が計画されています。
また、同社では、今後、作業員の習熟度の確認にもアイトラッキングを活用していく予定です。
同社のこの成果は、グループ企業に共有され、現在、グループ各社でもアイトラッキングの導入計画が進められています。
アイトラッキング分析では、視線計測後に測定時の動画を見ながら行うインタビューも素晴らしいですね。インタビューの中で、熟練者が持っている「ノウハウ」を引き出し、言語化してくれました。熟練者は教える立場でもあります。これまで自身としては当たり前にやっていた作業が、記録された自身の視線動画とインタビューによって、実は長年の経験に基づくもので簡単に言語化できない細やかな知識だったと気づくこともあり、その後の教育にも活かされています。また、教えたことがどこまでできているのかも見える化できるので、教育の効率も高まっています。第一三共プロファーマ株式会社 技術部 生産技術グループ 主幹 小池 充様
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執筆者
Tobii
読了時間
5分