ベストなサッカード

海岸沿いの道をドライブしていると想像してください。山や海、そして澄んだ青い空・・・素晴らしい風景が広がっています。目の前の様々な対象物を短い時間見つめることで海岸沿いの景色を素早くスキャンしていくので、あなたの視線は景色のあちこちに飛び交います。脳はそうして得られた断片的な視覚情報を結び付けて、一つの世界を再現し、長期記憶へと定着させていきます。このような素早い眼球運動はサッカードと呼ばれます。

Latvia大学ではこうした素早い眼球運動に研究をフォーカスさせています。彼らの最近の研究のひとつに、視覚刺激の位置とコントラストからどのような影響をサッカードが受けるのかというものがあります。分かりやすく言うと、見ているものがどこにあるのか、さらに周囲と比べてどの程度目立っているかによって、サッカードがどう変化するのかを調べているのです。研究参加者には、画面上の様々な位置に、異なるコントラスト・レベルのターゲット（ドット）が呈示されました。この研究にはTobii Pro ラボとTobii Pro フュージョンが使用されています。

科学者たちは、次のようなサッカードのパフォーマンスを測定しました。

• レイテンシー：何かを見つけたときに目が動きだす速さ。
• ピーク速度：ある地点から別の地点へ移動する時の目の動きの速さ。
• 正確度：対象物にどれだけ正確に視線がいくか。サッカードが狙った場所へ正確に着地すれば、精度が高いサッカードと評価される。

この研究では、刺激の空間的位置がサッカードの正確度とレイテンシーに大きく影響することが示されました。サッカードのパフォーマンスが最も良かったのは、サッカードが右か左に、水平に向かう時でした。刺激が中間的なコントラストである灰色や黒色の背景上にある場合は、中心点から左右へのサッカードが最高のパフォーマンスを示しました。一方淡い灰色のコントラストが低い背景では、最も低いパフォーマンスを記録しました。

この研究結果は、サッカードは、水平方向に対象物があり、高いコントラストで示される場合に最も速く、正確度も高いことを示唆しています。垂直方向でのサッカードを調査した場合、水平方向に動くサッカードを対象とした研究と比較出来ない可能性があることは覚えておいて下さい。また、背景色も重要な要素です。中程度の灰色または黒色の背景に、異なるコントラストの刺激を使用すると、サッカードのパフォーマンスが最も向上する可能性があります。一方、非常に低コントラストの刺激では、正確度と速度が悪化する可能性があります。

参考文献

Goliskina, V.; Ceple, I.; Kassaliete, E.; Serpa, E.; Truksa, R.; Svede, A.; Krauze, L.; Fomins, S.; Ikaunieks, G.; Krumina, G. The Effect of Stimulus Contrast and Spatial Position on Saccadic Eye Movement Parameters. Vision 2023, 7, 68.